UV-K5でのFT8運用
FT8通信をサポートしたUV-K5用のファームウェアとしては,KD8CEC 0.3vとFirmware-IVJとがあります.すでにUV-K5の旬は過ている感はありますが,ここでは,UV-K5でのFT8運用について調べた結果をメモします.
KD8CECのファームウェアは,CW, SSTV,APRS,FT8などの多くの機能を有しています.残念ながら,2024年6月以降は新しいヴァージョンは発表されていませんが,スタンドアロンでもFT8受信が可能となっています(追加のハードウェアが必要).
KD8CECは,blog http://www.hamskey.com/にて,ファームウェア0.3v http://www.hamskey.com/2024/05/introducing-uv-k5-version-03q-stable.htmlを用いたFT8とCWでの運用について説明しています.また同氏のyoutubeチャンネルhttps://www.youtube.com/@ianlee3061 にさまざまな動画をアップしています.
FT8
FT8は送受信がサポートされています.UV-K5ファームウェアver. 0.3vでFT8を行う方法は,http://www.hamskey.com/2024/05/introducing-uv-k5-version-03q-stable.html に書かれています.
ハードウエアとしてはhttp://www.hamskey.com/2024/03/introducing-uv-k5-version-03c-added.html に記載されているデータケーブルの改造(プログラミングケーブルに3.5mmのスピーカー出力端子をつけたもの)を行う必要があります.USB端子を接続するとともにスピーカー出力端子をPCのマイク端子に接続しています.少し強引な改造ですが,一般に売られているプログラミングケーブルではスピーカー出力端子にリード線が接続されていないので,やむを得ません.他の方法として,”Ham Radio All-in-one-Cable; AIOC ”https://github.com/skuep/AIOC を使用する方法もあります.”AIOC”はUSBシリアル通信をサポートしつつ,スピーカーとマイクの出入力をUSB AudioでPCに接続しますので,これ一本でPCを使ったFT8通信が可能となります.”AIOC”はgithubで基板データも公開されており,完成品も販売されているようです.
この構成でFT8通信を行うには,PC側には”WSJT-X for UV-K5”(KD8CECによるWSJT-Xの機能拡張版)と”DigiManager”(KD8CECによるWSJT-Xの機能拡張部分を利用してUV-K5の間の通信を担う)が必要です.これらの実行ファイルはWindowsのものしか提供されていません.しかし,WSJT-Xの機能拡張版のソースコードは公開されていますので,別のプラットホームにも移植できるかもしれません.
通常のFT8通信では,SSB(USB)モードで受信した音声信号をPCに取り込んでデコードし,送信時にはエンコード済の音声信号を無線機に送っています.送信機は,基本的に6.25baud(160mS毎)で変切り変わる8個のトーン信号をSSBで送信します.KD8CECによるFT8通信では,受信時は通常の方法と同様にSSBモードで受信した音声信号をUV-K5のスピーカー端子から取り出し,PCの音声入力端子に入力しています.一方,送信時は通常とは異なった方法をとっています.音声信号をUV-K5に送るのではなく,FT8通信用の音声変調する前のデジタルデータをシリアル通信でUV-K5に送って,UV-K5でFSK変調(周波数偏移変調)を行っています.この処理のため,WSJT-Xの機能を拡張したものを使用します.この機能拡張により,送信時にWSJT-Xは基準の音声周波数と79 個のFT8変調のシンボルデータをUDPサーバに送信するようになっています.”DigManager”はUDP受信サーバとして働き,受信したデータをシリアル通信でUV-K5に送っています.UV-K5は受け取ったこの基準音声周波数と79 個のシンボルデータを用いて,6.25Hz刻みの8つの送信周波数を6.25baud(160mS毎)で変切り替えてFT8信号を作り出しているようです.このためPC側では”WSJT-X for UV-K5”および”DigManager v1.0”の実行が必須です.既にWSJT-Xがインストールされている場合にも,この機能拡張版”WSJT-X for UV-K5”のインストールが必要です.PC側の設定はhttp://www.hamskey.com/2024/05/introducing-uv-k5-version-03q-stable.html に詳細に書かれています.また,WSJT-X for UV-K5でキャリア周波数を変更すると,”DigManager”経由でUV-K5の周波数も変化するようになっています.
残念ながら正しくデコードできるFT8信号を送出できる周波数には制限があるようで,それがhttps://github.com/phdlee/uvk5cec/releases/tag/v0.3q に記載されています.144MHz帯で使用する分には問題ありませんが,430MHz帯では日本で使われている430.510MHzはサポートされておらず,432MHz付近のみのサポートです。この周波数は日本ではEME通信のみが許されており,使用できません.実際,ダミーロードを使用してテストしたところ,432MHz付近ではデコード可能な信号を送出できましたが,430.510MHzではそれっぽいスペクトルは送出されるもののデコードできませんでした.このため,現状ではKD8CECファームウェア0.3vではFT8は144MHz帯以下でのみ使用可能です.もう一つの問題はカスタマイズされたWJTS-Xが必要なことです.このため,現時点ではAndroidのFT8CNは対応しておらず,受信のみで送信は行えません.
KD8CECは,UV-K5単体でFT8通信を行う方向での開発も進めていたようで,”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”を発表しています.詳細はhttp://www.hamskey.com/2024/03/c-board-for-uv-k5.html に記載されており,youtubeにも動画がアップされています.KD8CECはRP2040でこの”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”を作り,スタンドアロンでのFT8受信を行っています.当初KD8CECは,C-BOARD用のファームウェアをblogで連絡があった人に配布していましたが,その後の開発についてはblogの更新はありません.一方,最近Organisasi Amatir Radio Indonesia (ORARI) (Indonesian Amateur Radio Organization)のwebサイトに”DIY APRS Tracker menggunakan HT UV-K5/K6”なる記事が掲載されていますhttps://orari.or.id/diy-aprs-tracker-menggunakan-ht-uv-k5-k6/ .これはUV-K5をAPRS Trackerとして使用しようという記事で,KD8CECの”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”を使っています.この記事中ではKD8CECの作った”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”用ファームウェアもダウンロードできるようになっています.と言う訳で,本家あるいはORARIの記事を参考にして”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”を製作すれば,スタンドアロンでAPRSやFT8受信を行うことができます.
以上のようにUV-K5でFT8通信を行うには通信ケーブルの作成が必要です.と言う訳で通信用インターフェイスを作って見ました,また,”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”を製作し,ファームウェアを作って通信ケーブル用にすれば”AIOC”の代わりの通信インターフェイスとしても使えそうです.それぞれの制作の詳細については,別blogで紹介します.追加機能としてPCによる遠隔CWキーイングも可能になりました.
CW
KD8CECのファームウェア0.3vは,CWについてもCW(A1A), CWF(F2A: FM変調トーンによるモールス通信),CWN(送信無し)のモードを持っています.キーイングはストレートキー,パドル(Iambic A or B)が使用できます.0.3vにはcec_0.3VB.packed.binとcec_0.3VC.packed.binの2つのヴァージョンが存在し,前者は本体のキーパッドでもCW送信が可能ですが,Iambic.Bは使用できません.後者は外部キーが必須ですが,キーイング中でもキーパッドの操作が可能です.KD8CECがCWモードを最初に紹介したのは.http://www.hamskey.com/2024/01/introducing-uv-k5-version-01p-cw.htmlで,使用方法や外部キーの配線図が書かれています.外部キーについては,UV-K5に直接接続できるパドルがAliExpressなどで販売されています.AliExpress内で”Quansheng K5 CWキー CEC”などで検索すると出てきます.
外部キー用ケーブルを作るのも簡単です.100均ショップで3.5mmステレオヘッドホン延長ケーブルを買ってきて,途中で切断して,回路図に従って抵抗2本を挿入すれば出来上がりです.抵抗挿入部の機械的強度が心配な方は,Amazonで売っている「3.5mm ヘッドホン延長ケーブル 30cm ボリューム調節 ダイヤル付 オーディオケーブル」を改造するのが便利です.途中のボリューム部分の蓋が簡単に取れますので,分解して可変抵抗器を外し,KD8CECの回路図に従って抵抗2本を挿入して,蓋をすれば出来上がりです.
KD8CECの上記の説明では,将来的にPCを使った運用をサポートするかもしれないと書かれていますが,ファームウェアver. 0.3vではサポートされていないようです.しかし,インターフェイスケーブルや”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”を少し改造することでこれも可能となります.
ちなみに,0.3vcでは本体のPTTボタンを押すと送信モードになり,EXITボタンで受信モードになります.また,外部キー操作の場合,最初の操作で送信モードに切り替わり,それ以降の入力が送信されます.外部キーからの入力がなくなると,しばらくして受信モードに切り替わります.このため,PTTボタンとEXITボタンで送受を切り変えて使うか,外部キーで最初に”E"か”T"のダミー送信操作を行う必要があります.
JARD保証認定をうけるための送信系統図
日本で運用するためにはJARDの保証認定をうける必要があります.もしも,UV-K5にLPFをつけて免許を得ていれば,”アマチュア局の工事設計書における記載の簡素化等について”が使えるので申請・届出は不要です.JARDの保証認定には,送信系統図が必要です.145MHz帯および435MHz帯にそれぞれ外付けのLPFをつけた時の送信系統図の例(付属装置関連の記載は必要ないとのことでした.)と付属装置の諸元表の例(必要ないとのことでした.)を示します.また,高調波スプリアス特性の測定結果やバンドプランを逸脱しない旨の誓約書も必要だと思います.ちなみに,改造したUV-K5でJARDの保証認定を受けるには、JH4VAJさんのサイトやJP3GDTさんのサイトなどが参考になります.JH4VAJさんはLPFの頒布も行っていられます.
FT8
通常,FT8信号を送信する場合には,例えばWSJT-Xなどで発生させた音響信号をマイク入力からSSB送信機に入れます.この音響信号は6.25Hzずつ離れた8個のトーン信号が6.25baud(160mS毎)で切り変わっています.SSB送信機でモノトーンの信号を送信した時には,ただ単に1つの周波数で電波が送信されていることになります.このため,FT8信号は基本的には160mS毎に切り変わる周波数を持った強度の変わらない信号ということになり,電波形式の表記方としてはF1D(周波数変調,副搬送波を使用しないデジタル単一チャネル,データ伝送)となり,帯域幅は約50Hzです.一方,DSB送信機のマイク入力にWSJT-Xなどで発生させたFT8音声信号を入力すると,電波形式はF2Dになると考えられます.28MHz帯未満でのDSB送信機によるF2Dは認められていないようですが,28MHz帯以上のアマチュアバンドではこのF2Dも大丈夫なようです.実際に運用するには,いわゆるバンドプランの問題もあります.通常,FT8通信が行われている周波数は”狭帯域の全電波形式”が許される周波数です.”狭帯域”の定義は,A3Eを除いて帯域幅3kHz以下となっています.DSB送信機で普通に送信すると最大で帯域幅6kHzになる場合があり,データを送る場合にはバンドプラン違反になる可能性があります.しかし,トーン信号を1.5kHz以下にすれば,帯域幅は3kHz以下になります(帯域幅はトーン信号の周波数x2になるので).そのように制限すればこの問題もクリアできそうです.もちろん”全電波形式”が許される周波数で送信する場合にはトーン信号の周波数を気にする必要はありません.という訳で,F2Dで実際にFT8交信をする際には送信の音響信号は1.5kHz以下にする必要があります.
実際にダミーロードでテストしたところ,145MHz帯でも430MHz帯でもDSBモードで送信した場合に,通常のSSB受信機(USB)で受信・デコードが可能でした.
しかし,実際の運用には別の課題があります.オーディオケーブルを使ってPCと接続して交信しようとすると送受切り替えを行う必要がありますが,UV-K5の場合,スケルチが開いて受信状態になっているとVOXが使えません.UV-K5のVOXはスケルチが作動している場合のみ働くようです.FT8通信では,受信時にはスケルチレベルを0にして常時受信にするのが基本だと思います.このため,VOXが使えず送信時にいちいちPTTボタンを押して送信状態にする必要があります.これを手動で行うのは大変面倒なので,自動化が必要です.このためにはUSBシリアル変換ケーブルあるいはUSBシリアル変換モジュール(DTRあるいはRTS端子のついているもの)とトランジスタあるいはFETを使って,送信時にPTT端子をGNDに落とす回路をつくる必要があります.そこで,この場合にも使えるインターフェイス基板を作りました(別blogにて).一方,前出の”AIOC”を使用すればそのままでもこれが可能です(PCやMacでは問題なく使えますが,AndroidでFT8CNを使う場合には少し工夫が必要です(aioc-utilによる設定変更)).また,”C-BOARD (DSP-Board) for UV-K5”を改造して”AIOC”もどきを作製して使用することも可能だと思います.
CW
CWについては,PTTキーあるいは外部ストレートキーの使用が可能です.マニュアルの7.8で示されている接続ケーブルは外部PTT端子を使う方法で,コネクタの2.5mmピンの先を切断することで,内部スピーカーを使うようになっています.今回,BAOFENGのイヤフォンジャックのついた安価なスピーカーマイクを改造し,イヤフォンジャックをPTT端子に繋ぎ変えてみました.ついでに,スピーカー回路の改造を行いました.UV-K5では外部スピーカーを直接接続した場合,スケルチが開いて受信状態になっている場合には外部PTTスイッチが使えなくなる現象が報告されています.これは,スピーカーに大きな直流電流が流れてしまうためのようで,直列にコンデンサーを挿入することで解消されると報告されています.というわけで,下の写真のように,スピーカーへの配線をイヤフォンジャックを通さずに100uFの電解コンデンサー介してスピーカーに接続し,イヤフォンジャックをPTTに接続しました.これにより,受信状態でも外部PTTが作動するようになり,イヤフォンジャックに通常のストレートキーをさして外部キーとして使用できます.
JARD保証認定をうけるための方法
日本で運用するためにはJARDの保証認定をうける必要があります.Firmware-IJVでのFT8の変調方法はマイクロフォン端子からの音声信号入力ですので,UV-K5にLPFをつけて免許を得ていれば,”アマチュア局の工事設計書における記載の簡素化等について”が使えるので申請・届出は不要です.JARD保証認定を受ける場合は,送信系統図(付属装置関連の記載は必要ないとのことでした.),高調波スプリアス特性の測定結果やバンドプランを逸脱しない旨の誓約書も必要だと思います.ちなみに,改造したUV-K5でJARDの保証認定を受けるには、JH4VAJさんのサイトやJP3GDTさんのサイトなどが参考になります.JH4VAJさんはLPFの頒布も行っておられます.





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