UV-K5の50MHz帯+430MHz帯デュアルバンドトランシーバー化


UV-K5のVHF送信部を改造し,50MHz帯と430MHz帯のデュアルバンドFMトランシーバーにしました。

UV-K5については144MHz帯や430MHz帯以外のアマチュアバンドでのトランシーバーへの改造報告があります。

1.2GHz帯

by XENOMORPH

http://www.cqham.ru/forum/showthread.php?46386-Quansheng-uv-k5-%25ED%25E0-%25E4%25E8%25E0%25EF%25E0%25E7%25EE%25ED-23cm-1297-MHz&fbclid=IwAR39_dyWlo-svxjgAC7H6jusElWG0qzxLmysq4mrXj_Qzd3_KSKty1eEero

by 追い星

https://samy9900.livedoor.blog/archives/24790640.html 

https://samy9900.livedoor.blog/archives/26009809.html

70 MHz帯

https://github.com/ludwich66/Quansheng_UV-K5_Wiki/blob/main/hardware/KiCad/UVK5_reversing-70MHz_modv_20230702.pdf


28(27) MHz帯

https://github.com/ludwich66/Quansheng_UV-K5_Wiki/wiki/Hardware_Mods_27Mhz

by N5SIM

https://github.com/ludwich66/Quansheng_UV-K5_Wiki/blob/main/hardware/Quangsheng%2010-11-12%20Tx%20and%20Rx%20mod%205_21_24%20V2_D.pdf

by PU4WLG

https://www.youtube.com/watch?v=JwsR4fvYumU

https://www.youtube.com/watch?v=37FxlPYTYrE

PU4WLGのUV-K5の10m、11m、12mバンドへの改造マニュアル(英語、あるいはポルトガル語)は丁寧にまとめられており、上記リンクなどからダウンロード可能です。この改造では,受信部と送信部の両方で改造を行っており、3.5Wから5Wでの送信を可能としています。

今回は、これまでに報告されているものよりも比較的簡単だと思われる50MHz帯への改造を検討しました。まず受信側ですが、50MHz帯は無改造でも十分な感度がありそうなので、そのまま使うことにしました。次に送信側ですが、50MHz帯と430MHz帯のデュアルバンダーを目指しました。

UV-K5はリバースエンジニアリングで回路図が報告されており、改造に大変有用です。

https://github.com/mentalDetector/Quansheng_UV-K5_PCB_R51-V1.4_PCB_Reversing_Rev._0.9

以下に記載の部品番号は、上記のリバースエンジニアリングによる回路図に基づいています。PU4WLGの27MHz帯改造マニュアルは独自の部品番号を使用していますので、注意が必要です。回路図中の部品定数(コンデンサーのキャパシタンスやコイルのインダクタンスの値)は27MHz帯改造マニュアルの方が信頼性が高いと思います。

実際の改造は以下に示した通りです。

1。ファームウェア

まず、ファームウエアで50MHz帯を送信可能にします。日本で実際に使用しようとすると保証認定を受けることになりますが、この場合にはアマチュアバンド以外で送信できない状態にしておかないといけません(このための改造ファームウエアは後述)。ここでは、ダミーロードでのテストを行うことを前提として、F4HWMのファームウエアを使用し、全周波数で送信可能な状態にしておきます(設定の方法はF4HWMのgithubを参照)。

ハードウエア改造なしの状態で、50MHz帯で送信した場合の出力特性はすでに報告があります。今回、改造に使用したUV-K5の場合は図1のようになりました。これは51MHz,HIGH出力で,40dBのATTを通過後の信号をTinySA Ultraで測定した結果です。基本波は2mW程度しかありませんが,第2高調波が約2.3Wも出ています。第3,第4高調波も1W近く出ています。また、これよりも高次の高調波はVHF用のLPFによってある程度はカットされていることが分かります。

2。UHF側LPFの改造

まず、基本波が非常に小さい問題ですが、その原因の一つがUHF側LPFにありました。

ダイオードスイッチがVHF側に設定されていても高周波信号がUHFのLPF回路の一部に流れます。図2の回路図中では改造4。までの改造が示されています。

この図の上半分がUHF帯のLPFに繋がる部分でこの先にスイッチ用ダイオードがあります。また、下半分にVHF帯のLPFが描かれています。図中の右上のC122-L14-C119-GNDのラインが丁度50MHz帯の直列共振回路を形成し、50MHz帯の信号を逃がしています。そこで、L14を別の大きなインダクター(470nH、0805チップインダクター)に交換して共振周波数を下げました。図3に改造する部品の位置を示します。



L14を交換した時点での出力スペクトルを図4に示します。50MHz帯の出力は約10dB増加しました。高調波はほとんど変化なく、C122-L14-C119-GNDのラインで50 MHz帯の信号が逃げていたことがわかります。

3。pre-driverおよびdriver段の改造

次は、pre-driver段およびdriver段です。PU4WLGの改造マニュアルに沿って進めていきました。この改造点を図5に示します。また、基板上の関連する部品を図6に示します。

Q4(pri-driver)からQ5(driver)への結合コンデンサーC97(16pF)に並列にコンデンサー(470pF、0603)を付けて容量を増加させ、より低周波数の信号通過を促進しました(27MHz帯改造と同じです)。具体的には、既にあるC97の上にチップコンデンサーを重ねて乗せてはんだ付けしました。コンデンサーについては、元のコンデンサーを外して新たにコンデンサーを取り付けるよりも、現存のコンデンサーの上に重ねて取り付ける方が作業が楽ですので、基本的に上に重ねてハンダ付けしています。
次に、VHF送信時のQ4(pri-driver)への電源供給用のコイルL25にも同様に並列にコンデンサー(100pF、0603)を追加し、高調波を電源側に逃します(コンデンサーの静電容量は違いますが、基本的な考え方は27MHz帯改造と同じです)。L25と追加したコンデンサーで約50MHzの並列共振回路を形成しており、50MHz帯の信号以外を逃がしています。この改造を行うと、回路図からはUHF送信時にも信号が追加コンデンサーからC152、C151を通じてGNDに流れると考えられますが、実際にはUHF出力にはほとんど影響がありませんでした。C152の容量は回路図に示してある値よりもずっと小さいのかもしれません。
他方、27MHz帯改造ではQ5(driver)の後のL24に1nFコンデンサーを並列につけ、27MHz帯以上の高調波成分をGNDへ逃していますが、この改造はUHF送信にも影響を与えるため、今回は行いません。この時点での出力特性を図7に示します。

基本波の50MHz帯の出力が約1Wで最大となり、第2高調波は10dB程度減少して200mW程度、第3高調波も200mW程度に減少しています。


4。ファイナル電源供給コイルおよびVHF側LPF(インピーダンス整合部)の改造

次に、図2の回路図に示すようにVHF側のLPFを少し変更し,出力増加を図りました。

まず、ファイナル(Q8)への電源供給用のコイルL16(空芯コイル38nH)は、そのままでは50MHz帯の通過電流が大きいので1.2uH(1206)のチップインダクターに交換しました。また、VHF側のLPFを使用するためのダイオードスイッチ用チップインダクターL19も50MHz帯の通過電流が大きいので470nH(0805)のチップインダクターに交換しました。

LPFを形成するためのコイルはL17, L18, L20, L21, L22です。L17, L18のところでインピーダンス変換を行って、L20, L21, L22のところで本格的なLPFを形成しているようです。このため、まずはL17付近を改造して50MHz付近でインピーダンス整合をとり、50MHz帯の出力を増加させることにしました。具体的には以下のとおりです。

L17:約50nH(0.4mm径のポリウレタン銅線を1.6φのドリルに密巻き8回で作製)に交換

C129:並列に150pFのコンデンサーを追加

この時の基板の写真を図8に、51MHzでの出力特性を図9に示します。


51MHzの出力は3.5W程度になっています。また、LPFがオリジナルのままなので高調波スプリアスが盛大に出ています。出力はL17とC129の調整でもう少し増加させることが可能ではないかと思いますが、現時点ではこの値にとどまっています。(追記:L14を12回巻でC129を68pFでは出力3.8W程度になりました。)

ちなみに、改造後のUHF(送信周波数433MHz)での出力特性を図10に示します。
L16をインダクタンスの大きな(自己共振周波数の低い)チップインダクターに交換したためか、433MHzでの出力は少し低下し、2.2W程度になっています。スプリアス特性はほとんど変わっていませんので、免許を受けるにはこのバンドでも外付けLPFを使用して高調波スプリアスを-60dBc以下にする必要があります。


5。LPFによる50MHz帯の新スプリアス規制(スプリアス領域-60dBc以下)のクリア
図9に示すように、このままでは高調波スプリアスが酷くて使用することができません。この対応には以下の2つが考えられます。
①内部改造は終了し,外付け50MHz帯用LPFを追加(実験ずみ)
②内蔵LPFの改造(L20, L21, L22あたりの変更、実験中)

5-1。外付けLPFによる高調波スプリアスの低減

まず、手軽な方法です。もっとも手軽なのは、ヤフオクで出品されている50MHz帯用のLPFを使用する方法です。出品されているLPFはπ型3段タイプで、通過特性も記載されています。もちろん,π型3段程度以上のLPFを自作しても良いと思います。今回はヤフオクで出品されている50MHz帯用のLPFをそのまま使用してみました。この外部LPF装着後の51MHzでの出力特性を図11に示します。出力は若干低下し2.2W程度となりましたが、最も強い第2高調波はギリギリ-61dBcで新スプリアス規則をクリアしています。

というわけで、それぞれのバンド毎に外付けLPFを付ければ、50MHz帯と430MHz帯のデュアルバンドハンディトランシーバーが出来上がることになります。

5-2。内蔵LPFの改造(L20, L21, L22あたりの改造)(実験中)
原理的には、外付けで使用した50MHz帯用LPFをL20, L21, L22あたりで実現すれば良さそうです。現在、内蔵に向けて実験中です。

6。保証認定のためのファームウエア
日本で使用しようとするとJARDで保証認定を受けることになりますが、この場合にはアマチュアバンド以外では送信できない状態にしておかないといけません。このため、F4HWMのファームウエアをすこし改変し、50MHz〜54MHzおよび430MHz〜440MHzでのみ送信可能なファームウエアを作成しました。
現時点(2024年10月)で、F4HWMのファームウエアはVer.3.5まで進んでいますが、このファームウエアはVer.3.3を元にしています。バイナリーはこちら







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