UV-K5のスプリアス対策(VHF用内部LPFの改造)
安価なQuansheng 社製のVHF/UHFデュアルバンドトランシーバーUV-K5は、改造の自由度が高く、ソフトウエアおよびハードウエアの改造がさかんに行われています。
しかし、スプリアス特性が日本の規制値(出力1W超で-60dBc以下)に達しておらず、そのままではアマチュア無線機としてJARDの保証認定もうけられず、合法的に使用する事ができません。(下記のスプリアスの測定図はtinySA Ultraを使用して得られたものです。)
トリッキーな方法として,ファームウエアで送信最大(定格)出力を1Wに絞ることで,
ハードウエアを変えることなくJARDの保証認定を得る方法もあります。
KD8CECのVer0.1cを元にした1W制限ファームウエア
ファームウエアのバイナリーはfirmware.packed.binです。
F4HWNのVer3.3を元にした1W制限ファームウエア
ファームウエアのバイナリーはF4HWNの場合と同様に3種類あります。
日本ではアマチュアバンドの144MHz帯や430MHz帯の新スプリアス規制値は出力1Wを境に不連続に変化しています。出力1W超から50Wまででは-60dBc以下(出力1.1Wだと1.1μW以下, 出力50Wで50μW以下)が必要ですが、出力1W以下の場合は50μW以下で大丈夫です。これは出力1Wの時に-43dBcですので、UV-K5の出力を1Wに絞ると上記の測定結果ではそのままでも新スプリアス規制を満たすことになります。
一方、FCC(UV-K5はFCC IDを持っている)の基準では出力25W以下の送信機では25μW以下なので、出力5WのUV-K5のスプリアスは25μW(-53dBc at 5W)以下のはずです。上記の私のtinySA Ultra(未校正)の結果はそれよりは悪そうですが、FCC認証を受けている機器なのでよもや出力1Wの時に50μWの条件を満たしていないとは考えられません。私の時はスプリアス測定結果を提出してJARDの保証認定を受けましたが、出力が1W以下に限定されていることを示し、FCC IDと合わせると,もしかしたらスプリアス測定なしに保証認定を受けられるかも知れません(未検証です。前回の保証認定を受ける時にFCC IDを持っていることに気づきませんでした。)。
出力5Wのままで使用したい場合には,何人かの方々が主に外付けLPFによるスプリアス特性の改善の報告を行っています。
一方、内部LPFの改造の報告も144MHz帯のJJ1PIQさんによるものがあります。
JJ1PIQさんは,UV-K5の144MHz帯用LPFを改造し、新スプリアス規制をクリアされています。ただ、この報告ではコイルも交換しており、また変更・追加したコンデンサの容量値が不明でそのままでは再現が困難です。
そこで、144MHz帯についてオリジナルのコイルをそのまま使用し、コンデンサの追加だけで何とかならないか検討しました。結論から言うと,私の実力では全ての高調波を-60dBc以下にすることはできませんでした。もう少し頑張ればなんとか成ったのかも知れませんが、実は430MHz帯の方がもっと困難でしたので、ある程度にとどめ、以下に示すような外部LPFとの合わせ技での解決を考えました。
LPF改造の検討にはUV-K5のリバースエンジニアリングで作成された回路図とKicadファイルが役に立ちます。
ただ、この回路図中の素子の定数(キャパシタンスやインダクタンスの値)は必ずしも正確では無さそうです。
特にUHF(430MHzで使用)のLPFに使われているコンデンサーのキャパシタンスの値については、変なものもあります。コイルのインダクンスも現在の基板とは少し違うのもありそうです。
今回、144MHz帯用LPFのコンデンサについて色々検討した結果、図3の4個箇所にコンデンサーを追加することで以下の①や②のように特性を変化させることができました。
①空きランドのC134に68pF、C133に並列に82pF(親亀子亀)、C136に並列に68pF(親亀子亀)、空きランドのC48に47pのコンデンサーを追加した場合には、図4に示すように第2高調波-58.5dBc、第3高調波<-67dBc、第4高調波-63.8dBc、第5高調波-65.3dBc、第6高調波-63.6dBc、第7高調波<-67dBc、第8高調波-62.6dBc程度になりました。
この場合、第2高調波(290MHz)以外は新スプリアス規格をクリアしています。残った第2高調波(290MHz)ももう少しなので、コイルに並列に挿入されているC132、C135およびC137のキャパシタンスやコイル長を調整をして、うまく並列共振周波数を290MHzに合わせることで減衰させられるかも知れませんが、今回は深追いしていません。
②図5に示すように空きランドのC134に100pF、C133に並列に100pF(親亀子亀)、C136に並列に68pF(親亀子亀)、空きランドのC48に47pのコンデンサーを追加した場合は、図6のように第2高調波-60.2dBc、第3高調波-64.6dBc、第4高調波-63.8dBc、第5高調波-62.1dBc、第6高調波-51.6dBc、第7高調波-59.3dBcになりました。
この場合、第6高調波、第7高調波以外が新スプリアス規格をクリアしています。
既にあるコンデンサーの上に亀の子でコンデンサーを追加するのは、細いハンダゴテ先を使用すると比較的簡単でしたが、空きランドに新たにつけるのは少し手間が掛かりました。
残念ながら、上記のように私の実力では144MHz帯のすべての高調波について新スプリアス規格をクリアする条件を見つけられていません。しかし、後述の430MHz帯との兼ね合いで、144MHz帯の検討はここで止めています。
なお、この結果は私が試験した機器のものであり、他の個体についての再現性は保証できません。購入時期によってLPF周りも微妙に変わっているようです(例えばアンテナコネクタ直近のコイルが2ターンのものもあるようですし、430MHz帯送信用LPFのコイルが割ってあるものもあるようです)。私が購入したUV-K5(8)とUV-5R PLUSは,いずれも上記の写真の様になっていました。
次に430MHz帯ですが、オリジナルの状態では,図2に示すように第2高調波(870 MHz)と第3高調波(1.30 GHz)のスプリアスが規制値を超えています。これらについてもコンデンサーの付加による減衰を検討したのですが、現在のところスプリアス特性をうまく改善する条件を見出せていません。これ以上進めるには、コイルとコンデンサーを取り外して値を確認するとか、新たにコイルを巻くなどを行う必要があるのではないかと思っています。コイル間の結合対策も必要かも知れません。
と言う訳で、430MHz帯用内部LPFの改造は一旦あきらめ、外付けLPFの追加を考えました。ところで、上記の144MHz帯LPF改造②では第6高調波(870 MHz)と第7高調波(1.02 GHz)が未決で残っていますが、430MHz帯用外付けLPFを追加することで,これらも同時に除去できそうです。すなわち、144MHz帯LPF改造②を行なっておけば、430MHz帯用外付けLPFの追加で両バンドの新スプリアス規制を同時にクリアすることが出来そうです。
外付けLPFについては,JH4VAJさんが作成・頒布を行っているのでこれを使用しました。
JH4VAJさんは上記の記事中で回路図も公開されています。
144MHz帯LPF改造②の後にJH4VAJさんの430MHz帯用LPFを外付けしたところ、図7に示すように残っていた144MHz帯の第6高調波と第7高調波は減少し、新スプリアス規制を十分クリアできました。それに加えて290MHzの第2高調波スプリアスの強度も少し減少しました。なお、最終的な144MHz帯の送信出力は若干低下し、約3Wとなりました。
ちなみに、430MHz帯についても図8に示すようにJH4VAJさんのLPFで新スプリアス規制をクリアできています。
改造したUV-K5でJARDの保証認定を受けるには、JH4VAJさんのサイトやJP3GDTさんのサイトなどが参考になります。
コメント
コメントを投稿